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FIRST OF ALL
懐石は禅林にて菜石と云ふに同じ
温石を懐にして
懐中をあたたむるまでの事なり
・・・南方録より
もともと「懐石」とは禅宗の僧が空腹をしのぐために懐にいれた温かい石のことでした。
現在の日本の伝統料理としては、禅門における「精進料理」、茶の湯で濃茶をおいしく飲むための「茶懐石料理」、酒宴向きのおもてなし料理としての「会席料理」などがあります。
それらは、和食店・日本料理店では総称して「懐石料理」と呼ばれており、基本的な流れはありますが、本格的なお茶の席でない限り、順序や出される料理の制約はないようです。今回は「懐石料理」を、グローバルな視点で注目してみたいと思います。 |
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利休七則をご存知でしょうか?利休七則とは、茶の湯を学ぶ人たちの基本心得です。
七則の“則”は規則の“則”と思われがちですが、ここで言う“則”は気遣いたいこと。
「客をもてなすため心遣いしたいこと」です。
一、茶は服のよきように点て →相手の気持ちや状況を考え、調度よい加減に点てる。
二、炭は湯の沸くように置き →要点を押さえて準備を整え、湯を沸かす。
三、花は野にあるように →本質を感じられるように花をいける。
四、夏は涼しく冬暖かに →相手を思い温度調節をする。
五、刻限は早めに →ゆとりをもって接する。
六、降らずとも傘の用意 →相手に対して「憂いなし」を想定する。
七、相客に心せよ →相手に気を配る。
茶の湯に限らず、客をもてなす際にとても役に立つ心得です。
懐石料理は、「夏は涼しく冬暖かに」の気持ちを大切にし、季節を意識した料理が出されます。旬の食材を使った料理が、三キと呼ばれる「季(キ)節」と「器(キ)」と「機(キ)会」を考え提供されるのです。「季節」を考え旬の食材を使う。料理との調和が取れる「器」を使う。そして料理のタイミング(「機会」)に気を配る。客のために走り回って材料を集め、調理してもてなすという「ご馳走」の語源が、料理の真髄であり、心遣いなのでしょう。日常生活の中でも、あたり前のように「おもてなしの心」を取り入れていきたいものです。
2005年・日本では、イタリアで提唱された“スローフード”や、“ロハス”という新しいライフスタイルが受け入れられました。「懐石料理」は日本が世界に誇れる食文化のひとつです。日本の伝統的な食文化を見直し再認識することで、新しいライフスタイルも定着し、進化・発展させていくことができるのかもしれません。 |
COURSE
「懐石料理」と「フランス料理」
懐石料理の構成は一汁三菜(汁物・刺身・煮物・焼物)を基本としたフルコースです。
料理は器との調和をとり、量もやや少なめ、器の余白が生きるように盛り付けられます。フランス料理でたとえるならば「ヌーベルキュイジーヌ」でしょうか。「ヌーベルキュイジーヌ」とは、日本の懐石料理から影響を受けたと言われる新傾向のフランス料理です。素材の持ち味を重視し、あっさりとした味わいと盛り付けの工夫を特徴としています。
おいしさと健康をコンセプトとした料理法は、フランス料理だけでなく、世界の料理に幅広く影響を与えています。
向付(むこうづけ)⇔ アミューズグール
「和」膳の中央より向こうにあることから向付と言われている。
「仏」食前酒と共に食するおつまみ。手でそのまま食べられるものが多い。 |
| 数の子と菜の花の黄身芥子和え |
ズッキーニのロースト・バジルソース添え |
刺身(さしみ)⇔ オードブル(前菜)
「和」白身魚の細作りが一般的。茶懐石では向付で出される。
「仏」スープの前に出る軽い料理。冷肉・野菜などの盛り合わせ。 |
汁(しる) ⇔ スープ
「和」吸い物は箸先を洗い清めるもの。茶懐石でいう汁は味噌仕立てが多い。
「仏」肉・野菜・魚などを具材とした液状のもの。コンソメやポタージュなど。 |
焼物(やきもの)⇔ ポワソン(魚料理)
「和」一汁三菜以外に客をもてなしたいときにだす。切り身の焼き魚が多い。
「仏」簡素化されるときは、魚料理と肉料理のいずれかとなる。 |
| 金目鯛柚香焼き・鰹胡桃・菊花蕪 |
鯛のロースト・プロバンス風 |
煮物椀(にものわん)⇔ ビアンド(肉料理)
「和」椀盛ともいい、懐石うちで一番のご馳走。材料の取り合わせで季節感を出す。
「仏」フルコースのメイン料理となる。冬場にはジビエ(野禽)なども提供される。 |
| 大根と鶏つみれの煮物 |
牛ほほ肉の煮込み・フォンドボー仕立て |
飯(めし)⇔ パン
「和」茶懐石では最初に少量出されるが、和食店では最後に出されることが多い。
「仏」通常はフランスパンで、アミューズ後からデザート前までサービスされる。 |
水菓子(みずがし)⇔ デセール(デザート)
「和」もともとは果物のこと。水ようかんなど、水分が多く使われる菓子。
「仏」2・3品提供されることも多い。食後にはプティフールがサービスされる。 |
| 黄粉ババロア・黒蜜がけ |
モンブラン・リンゴのコンポート添え |
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⇔は必ずしもイコールではありませんが、料理の構成を対比してみると、お互いの影響を垣間みることが出来ます。今、フランスでは「ヌーベルキュイジーヌ」から、モダンな感性を取り入れた「キュイジーヌモデルヌ」へ変化しています。今日のフランス料理界をリードするアラン・デュカスやジョエル・ロブション、ピエール・ガニエールなどが、その担い手となっています。彼らは古いものを捨てて、新しいものを創造するのではなく、伝統的なもののよさや精神を生かし新しい料理を創造しているのです。ガニエール氏の料理メニューには“天ぷら”なども取り入れられています。
「懐石料理」と「フランス料理」のように、自国のよさに他国のよさをプラスして創造するようなアクションは、「食」という世界だけに限らず、これからも行われて行くのではないでしょうか。そしてその根底には、今も昔も変わらず「客をもてなす心」があるのです。 |
Text by Ruriko Ushigaki |
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