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「江戸木箸」と聞いても、耳馴染みのない人の方が多いに違いない。
そもそも東京は、80年以上の歴史を持つ箸の産地なのだが、江戸木箸のはじまりは今から10年ほど前。大黒屋の主人、竹田勝彦氏によって商標登録され、この世に誕生した。
「ずんぐり箸」や「納豆箸」、「楽ちん箸」など、その独創的な箸のスタイルが話題を呼び、日本のみならず世界にも根強いファンを持つにいたる。
歴史は浅いが、箸文化の新時代を築く、注目の箸といえよう。 |
江戸木箸の魅力は、その機能性にある。
「箸は飾りではなく道具」であり、「デザインや色柄といった見た目ではなく、きちんと手に持って感覚を以って選んでもらいたい」と竹田氏は語る。
塗箸と違い、木箸は光沢もなく、何かが描かれているわけでもない。質素だ。しかし、美しい。そして、その美しさは、手にした瞬間大いに発揮される。
五角に削られたものは、箸を操る三本の指が五面にスムースに収まり、八角に削られたものは、丸みがあり、違和感なくすっと手に馴染む。そしてどちらも、細くのびた箸先がぴたりと合う。細く繊細なフォルムだが、不思議と安定感が備わっている。
「機能美は、そのバランスにあります」。
機能性を追及し、バランスの良い箸を作ることで、結果的に美しいデザインになる。さらに、使い勝手の良さは、自然と持つ仕草をも優雅なものにする。そこに色柄へのこだわりはない。 |
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「皆さん、靴は履いて、服は試着して買います。サイズが同じでもメーカーなどによって多少の違いが出てくるからでしょう。箸も同じです。特に箸は、食べ物という“命の根源”を口へと運ぶ大切な道具。だからこそ、この人によって、あの人によって、よりよく機能する箸を作りたいんです」。
決して量産はしない。あくまで手仕事にこだわり、一つ一つを丁寧に仕上げていく。
常にこだわるのは“食い先一寸”だという。
箸の心臓部ともいえる部分であり、細く、左右が合うものでなければ使いにくく、口に入れた時の感覚も悪い。
「かなりの神経を使ってやっていますね。箸は料理を口に運ぶだけではなく、料理を食べやすくし、さらに美味しくするための道具ですから」。
江戸木箸の箸先の細さを一目見れば、その違いに驚き、感動すら覚えるに違いない。 |
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納豆箸(左から2番目)
力を入れやすくするために、長さは短めの19.5cmに。
先が丸くし、納豆が混ざりやすい。そのままごはんにかけて食べても食べやすい作りになっている。
豆腐箸(左から一番目)
やわらかい豆腐が掴みやすいよう、割り箸のように食い先の面を広く。握るところは八角に削り持ちやすくなっている。 |
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伝統工芸品というと、天然記念物のごとく、古くからのスタイルをそのまま固持していくように思われがちだが違う。「時代に生きていなければ、伝統工芸品とはいえない」と竹田氏が語るよう、伝統とは、ライフスタイルの変化とともに、時代の求める製品を提供する柔軟性と先見性が必要だ。
江戸木箸は、江戸の伝統工芸である木箸の技術を受け継ぎつつも、顧客のニーズを読み、捉える。今までも、これからもその姿勢は変わらない。
「料理によって器を変えたりするでしょ?でも、箸でそれはしないんです。箸は万能。ですが、使い分ける箸があってもいいと思う。当たり前に使うのではなく、箸を使う楽しみを広げていきたいんですよ」。 |
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「私はね、居酒屋にだって、どこにだって最低3膳の箸を持って行きます。その料理に合った箸、使い慣れた箸で食べる料理が一番美味しいですから」と、ご自慢の『マイ箸』を最後にそっと見せてくれた。
殆どの人がこれまで気にも留めなかったほど、自然と生活に溶け込んでしまっている道具、箸。しかし、それは食と私たちを橋渡しする、大切な道具だ。
たった一つの、あなただけの“プレミアムな箸”を持つことは、新たな饗宴へと私たちを誘い入れてくれるだろう。■ |
Text by Eri Kadono |
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