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私は、大学を卒業してすぐ、そのままエスカレーター式に家業を継いだわけではありません。小さい頃から、「いつかは継ぐんだろうな」と頭の片隅で感じてはいたんですけど、なかなか行動するまでには至らなくて…。大手食品会社での事務職、結婚、離婚、広告代理店でのアルバイトと、紆余曲折を経てようやく辿り着いたのが、「ホッピービバレッジ」だったんです。
今思えば、自然な流れなんですけど、敢えてきっかけを挙げるなら、現在の社長である父が地ビールの製造免許を取得したことかもしれませんね。「あ、うちってビールも造れるんだ」と、改めて家業を見直す機会になったんです。
それをきっかけに勉強をはじめ、お酒の世界のおもしろさを知り入社を決意しました。眠っていた商売人魂が目覚めたのかもしれません。 |
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いざ入社してみて驚きました。
会社に覇気がなくて、暗い。古くからいる社員が多く、安定した取引先との関係に胡坐をかいたままの商売だったんです。昔のままを引きずっていたのは商品も同じ。会社のイメージそのままの“泥臭くて”“暗い”ホッピーでした。
90年代後半、女性の社会進出も増え、マーケットも「女性の時代」に入りかけの頃。女性に認められなければ、商品価値は上がりません。しかし目の前にあるのは、女性である自分が全く魅力を感じることの出来ない、“オヤジの飲み物”ホッピー。「このままじゃダメだ!変えなくては!!」と、改革に乗り出しました。 |

最初の改革は、ホッピーを“オヤジの飲み物”というイメージから一新すること。そのために、古くさくてダサいホッピーの赤いロゴを捨て、スタイリッシュなデザインの「ホッピーハイ」を作りました。しかし、これがなんと大失敗。全く売れなかったんです。1000万以上の損失を出し、あの時は本当に参りました。
でも、その失敗のおかげで大切なことに気づくことが出来ました。それは、あったものを全てぶち壊して、新しさを求めることが改革じゃない、ということです。
私の好きな言葉に「伝統は革新の連続である」という、虎屋の黒川社長の言葉があります。この「革新」とは、新しいことではなく、あるものを大切にしながら「経験」を積み重ねていくことなんですよね。
ホッピーには、歴史があり、伝統がある。そうした根付いているものを変えるのではなく、踏襲していく。その軸を決してぶらしてはいけない。つまり、“原点回帰”であり、“温故創新”です。 |

原点とは、祖父が残したオリジナルのホッピー、そしてホッピーを愛してくれるお客様の存在。改めて原点に戻り、私の新たな改革がスタートしました。
まずは、ホッピーのことをもっと知ってもらおうとホームページを立ち上げました。ホッピーの飲めるお店や買い方、飲み方の提案など、これまでホッピーがどういうものかを知らなかったお客様の「?」に答えていきました。
そして、ラジオへの出演。とにかく、広報活動に活用できる手段は使いたかった。充分な広告費もない会社ですから、商品そのもの、そして自分自身が広告塔になるしかない。ラジオへの出演、ホームページでの日記公開。こうして、“看板娘ホッピーミーナ”が誕生しました。
お陰様で、メディアに取り上げていただく機会も増え、それにあわせ業績も好転しました。
私の基本は、とにかく現場視点を持つということです。
マーケティング戦略に長けているとか、褒めていただくこともあるのですが、そんな大それたものではないんです。お客様に会い、お客様の声を聞き、それを商品に反映してきただけ。それだけなんですよね。
例えば、以前のホッピーは“酔うためのお酒”です。しかし、健康ブームの現代においては、プリン体ゼロ、低カロリーの“健康によいお酒”としての需要があり、その魅力をアピールした方がいい。だから、ラベルもそれにあわせたものにしました。

また、「ホッピー=焼酎」だけではなく、新たな飲み方を通し、もっと幅広いお客様に楽しんでいただきたいと思い「ホッピーカクテル」を提案しました。
実は、これは私自身の思いでもあります。
ホッピー屋に生まれていながら、焼酎が身体にあわないんです。ホッピーを飲む時は、「もちろん焼酎!」なのですが 笑。でも、もっと他の楽しみ方もあるんじゃないかな、と考えました。ジンやカシス、梅酒といったリキュールとあわせたところ、これがおいしくて。「焼酎じゃないホッピーなんて邪道だ!」と思われる方もいるかもしれませんが、結構好評なんですよ。
でも、こうした私の改革は、ホッピーの隠れていた魅力を引き出しただけ。特別新しいことは、何もしていません。
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| 「ホピトラ」 街を走る姿を見かけた人も多いのでは? |
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私は、祖父や父の残してくれているものだけで、ここまでくることが出来ました。でも、その「ホッピー」ブランドに甘んじて、食いつぶしていくようでは衰退していくだけです。
後世のことを考えると次なるブランドを構築していかなくては、と思います。まだそれが何かは考えられていないんですけどね 笑。
しかし、それも日々の仕事を通じて必ずヒントを得られる日が来ると信じています。頭で考えてもダメ、とにかく行動あるのみ!です。
仕事はきつくない、といったら嘘になります。でも、お客様に会うこと、ホッピーの魅力をたくさんの人に伝えていけるこの仕事は、楽しい。本当に楽しいんです。これからも、もっともっとお客様に会っていきたいですね。だって答えは現場にしかありませんから。
いろいろな回り道をし、時には自分は社会から必要とされていないんじゃないか、と思う時もありました。でも、今は違う。
「私はホッピーのために生まれてきた」。
これだけは、自信を持って言えますね。 |
◆プロフィール
石渡美奈
1968年東京都生まれ。
90年に立教大学文学部卒業後、大手食品メーカーへ務める。
93年に退社。広告代理店などで働いた後、
97年に家業であるホッピービバレッジに入社。
2003年副社長に就任。
趣味は、ステーショナリー集め。
特に今は万年筆のインクに凝っているのだとか。
ホッピービバレッジ ホームページ
http://www.hoppy-happy.com/
※ページ上部写真:石渡副社長のお気に入りラベル 復刻版(2002〜2003年にかけて発売) |
Text by Eri Kadono |
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