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梅干への一目惚れ、これが私と和食との出会いです。
40年前、突然の来日で訪れたのは、四国の讃岐でした。そこで出会ったのが、「うどん」と「梅干」です。夏の暑い日で、全く食欲もありませんでした。しかし、それらを口にしたところ、不思議と違和感なく食べられたのです。何よりもそのおいしさに感動しましたね。まさに、一目惚れ。一瞬にして、これまで口にした事もなかった和食の虜になりました。それからは、食べれば食べるほど、知れば知るほど、和食や日本の食文化の魅力に惹き込まれていきました。


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東京に移り住み、学生生活を始めるころには、食べるだけでなく、自分で料理を作るようになりました。その当初は、近所のお豆腐屋さんのおかみさんたちが先生。本格的に勉強を始めたのは、近茶流の日本料理教室である「柳原料理教室」に通い始めてからです。初めは慣れない日本語での授業についていくのがやっと…。1年くらいして経ち、ようやく面白さを感じられるようになりましたね。
面白くなると同時に、より日本料理を深く知りたいという思いも強くなりました。その時手にしたのが、先代の柳原敏雄先生のエッセイだったのです。
そこで、先生の文章に驚き、感銘を受け、料理は「食べる」だけでなく、言葉や文章で表現できる「ストーリー」があることを知りました。そして、私自身、日本の食文化のストーリーを伝えたいと思うようになりました。

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私が住んでいたアメリカには、「季節感」、「旬」といった感覚がありません。どちらかというと、地場のものを使うよりも、遠いところから珍しい食材を取り入れることを良しとする文化。私は日本に来て、初めて旬のものを使った献立を味わう習慣を知り、感動しました。その魅力、素晴らしさをアメリカに伝えたいと思い、NYの『グルメ』誌に『日本の料理シリーズ』の連載を持ちかけたのです。
それが、今から35年前、1972年のこと。日本料理や和食がほとんど知られてない時代です。内容は、『The Seasonal Japanese Kitchen』と題し、日本の行事食について。ひなまつりや七夕、お正月…とひとつひとつの行事を取り上げ、それにまつわる料理の説明と合わせて紹介。料理だけではなく、文化とともに楽しみ、味わうという日本の食文化のストーリーを紹介したかったのです。
掲載を持ちかけた当初、出版社は、「珍しい話題だし、とりあえず…」程度の思いだったと思いますが、いざ掲載してみたところ、読者の皆さんからの反応がすごくよく、何通も何通もお手紙をいただきました。


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80年代に入り、一時アメリカへ戻ることになり、これはチャンスだと思いましたね。日本からの発信だけでなく、今度はアメリカにいるからこそ出来る、感じられる日本の食文化を伝えられると思いましたから。そこで、出版したのが「An American Taste of JAPAN」という本です。簡単に言えば、今でいう「フュージョン」。アメリカの食材を日本の調理法で、日本の食材をアメリカの調理法で料理したメニューを掲載。もちろん、その当時「フュージョン」なんて言葉はありませんでしたから、「cross-cultural cuisine」という表現をとりました。
醤油ブームをはじめ、日本の食材や食文化が入り始めていた時代。NYに日本料理店も増えてきたころです。

NYで老舗の日本料理店で、60年代から続いている「レストラン ニッポン」というお店があります。そこの店主の倉岡さんとはもう古い付き合いになるのですが、NYでの日本料理店の在り方も随分変化した、というお話をしたことがあります。
倉岡さんがお店を開いた当初から、かなり「献立」が変化したそうです。昔は会席、といえばお椀、ごはんでコースを締めるものでした。しかし、今は最後にデザートが出てくるのが当たり前になっている。味噌汁も最後ではなく、フレンチのスープのように最初に出されます。NYと日本、お互いの食文化の「当たり前」の価値観がぶつかり合って、融合したカタチですよね。


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日本国内であっても、時代に合わせ、「和食」は変化しています。しかし、和食の基本である、考えや心というのは生き続けていると思います。
例えば、コンビニでお惣菜やおにぎりを買う時でも、皆さんは意識していないかもしれませんが「和食の基本」が現れています。
買い物籠の中を覗けばわかりますよ。実にカラフルで、1品だけで済まそうとする人はほとんどいません。煮物に揚げ物、おにぎり…、というように、甘いもあれば辛いもある、「五味・五色・五法」を自然と実践しているのです。
和食や日本料理を面倒だとか、手間がかかると思っている人が多くいますが、それは違います。和食というのは、経験や体験をもって、日本人の心に植えつけられているもの、身近な生活の中に根付いているものなのです。

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現在、私は在日外国人を対象としたお料理教室「A Taste of Culture」をやっています。料理をはじめ、試食会やマーケットツアーなど行っているのですが、参加者を通して、日本の食文化や食材に関し、いろいろと興味深いことがわかりますよ。
試食会は、何種類もの同じ食材の食べ比べを行います。特に人気の食材は「味噌」。そして、その味噌は、国によって好みが違うことがわかりました。
欧米のようにパンを主食とする人には麦味噌、甘辛い味付けの料理が多い東南アジアでは西京味噌。八丁味噌(赤味噌)が好きなのは、オーストラリアの人。「マーマイト」という料理の味にそっくりなのです。日本の国内同様、外国でも国によって好む味噌が違うというから、おもしろいですよね。

このように、日本に住むものとして、外国で生まれ育ったものとして、「和食」というものについて様々な観点から考えてきました。今後も、日本の食文化を日本に、世界に、伝えていきたいと思います。

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■安藤エリザベス氏
ニューヨーク生まれ。ミシガン大学卒業。
1966年に来日、柳原料理教室にて「日本料理」を学ぶ。
日米両国でジャーナリスト、講師、ビジネスコンサルタントとして幅広く活躍。
『グルメ』誌、『ニューヨーク・タイムズ』などに寄稿、食に関する著書も多数。
1973年から日本料理教室「文化の味」を主宰。

文化の味のホーム・ページ
http://www.tasteofculture.com/



Text by Eri Kadono
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