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両親がレストランを経営していた彼にとって、料理や菓子はいつも身近にあるものだった。小学校の頃からビスキュイを焼くなど、菓子作りが大好きだった少年は、自然と料理の世界を目指すようになる。義務教育を終えた後、パリのパティスリーやレストランでパティシエ、料理人として修行。そして、星付きレストランへ就職・・・と、誰もが通るような道ではあるが、一歩一歩着実に歩んでいた。そんな彼は、「ラ・ターブル・ダンヴェール」というレストランで一躍注目を浴びるようになる。「ラ・ターブル・ダンヴェール」は、彼が実兄と始めたレストラン。兄がシェフを、弟がパティシエというコンビだ。まもなくミシュランの1つ星を得るまでに成長するが、兄弟の仲は悪化。1986年のオープンから12年経った1998年、兄弟はついに喧嘩別れをしてしまう。

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しかし、そこからが彼の本当の意味でのスタートだった。キャビアの名店「ペトロシアン」をオープン。そこでは、パティシエとしてだけでなく、シェフとしてもその才能を発揮。オープンからわずか1年で、星を獲得。デセールはもちろん、料理でも高い評価を受けた。
「最初につくった料理は、サーモンのソルベ。ハイビスカスとビーツのジュレを使って作りました。菓子ではなく料理を作ることも、私の中では自然なこと。ソルベやジュレ、私の料理は、あくまでも製菓のテクニックを使った料理ですから」。

製菓のテクニックで料理へアプローチをする。単にそれは、彼がパティシエ出身だからという理由ではない。「テクニックは味を演出するための道具に過ぎない」と語るよう、フィリップ・コンティシーニにとって、何よりも大切なのは「味」なのだ。そこに料理や菓子という境はない。
自分の思い描く味を作り出すためならば、どんなテクニックであろうと関係ないのである。これが彼の哲学だ。



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2003年秋冬ケーキ「ルシアン」 2005年秋冬ケーキより「タルト マロン」 2006秋冬ケーキより「モンブラン ビジュー」



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「味こそすべて」と語るよう、彼の創り出す味はオリジナリティ溢れ、独特だ。シンプルながらも、食べるほどに口の中で変化する。そして、どこか懐かしさを感じる味。
味を創り出すうえで重要なのは、「シンプルであること。そして、トラディッショナルなものであること」だという。基本は、あくまでシンプル。シンプルな素材を使いながらも、口の中で強い印象が残るのは、テクスチャーの変化によるもの。違うテクスチャーのものを組み合わせることで、時にモダンで、時にダイナミックな味わいを生む。

また、シンプルにこだわるからこそ、素材選びは慎重だ。「子どもの頃好きだった味、食べている味に人は一番落着きを感じ、喜びを感じますよね」と語るよう、ベースはトラディッショナルなものを選ぶ。それは、フランスのものに限らない。今や、活動の範囲は、フランスや日本だけでなく、NY、ポルトガル、モスクワ、キプロス・・・、と世界に渡る彼。どこへ行こうと創作のスタンスは同じなのだ。
そこの国や土地の料理や調味料を食べる。そこから、ひらめきを手がかりに独自の世界を構築。即興で次々と味を作り出していく様は、まさに"味覚の魔術師"の名にふさわしい。本当にもの作りが好きな職人なのだろう。



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「アイデアが浮かばず悩んだことはない」と彼は、きっぱりと言った。彼の創造力に限界はないのだ。しかし、その豊かな想像力が、実は子ども時代の引きこもりがちな生活から養われたものであることを、知るものは少ない。幼少期から肥満を理由にイジメを受け、家に帰れば、出来のいい兄と比べられる日々。次第に自分以外の他者とのコミュニケーションを拒むようになった彼は、想像の世界で生きるようになる。
「幼い頃は辛いこともありました。しかし、その経験により、私は自分自身の感性、味を見つけ、自分の力を信じられるようになったのです」。



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2007.5/10赤坂店のメニューより「ジュド・フリット」 2007.5/10赤坂店のメニューより「チョコとミントリキュールのグラスデザート」


今、時代は常に新しさを求めている。そのために多くのパティシエたちは、高い技術を求めてやまない。しかし、彼は言う。「本当に必要なものは、技術ではありません。私が大切にしていることは2つ。1つは直観を信じ、自分だけの味をつくること。他人から学んだ味では、おいしさを感じても、決して味に魂を感じない。オリジナリティこそ、本当に人を感動させることが出来るのだと思います。そして、尊重する心を忘れないこと。素材へ、文化へ、食べていただくお客様への尊重の気持ち。物を作る人間として最低限必要なことであり、最も必要なことだと思います」。幾多の辛酸をなめて、トップパティシエの座まで登り詰めてきた彼らしい言葉だ。 070520_01_03.jpg

オリジナリティ溢れるコンセプトで、先鋭的なクリエイションを世の中に送り出し続けてきたフィリップ・コンティシーニ。彼がフランス、日本の料理、製菓業界へ与えてきた影響は大きい。
今年の秋には、パリの3区、ブルターニュ通りに新たなレストランをオープンするという。フィリップ・コンティシーニ、若き改革者の勢いは、とぎれることなく続いていく。


フィリップ・コンティシーニがクリエイション・ディレクターをつとめる「Peltier」のペルティエ赤坂店が、
2007年5月10日よりリニューアル・オープン!!

◆ペルティエ 公式サイト
http://www.juchheim.co.jp/peltier/index.html
◆ベルビー赤坂 公式サイト
http://www.bellevie-akasaka.com/shop/peltier.html

営業時間 :パティスリー 10:00〜21:00
(土・日・祝日10:00〜20:30)
  サロン ド テ 10:00〜23:00
住所 :東京都港区赤坂3−1−6ベルビー赤坂1F
TEL :03-3588-5023


Text by Eri Kadono
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