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映像と食のおいしい関係


モノの見方

時間軸で切り取ると、『音楽』と『料理』は構造的に似ているところがあるけど、『映像』は少し違うんですよね。
『音楽』をある瞬間で切り取ると、ボーカル・ギター・ベース・ドラム…etc.と複数の音が「同時に」存在していて、それが重なってひとつの音楽になる。
『料理』も一緒で、塩・胡椒・肉…etc.とそれぞれがあって、「同時に」存在して、ひとつの料理になる。でも、『映像』は、そういうふうに「瞬間の時間」において、要素を分解する事はできない、そんな感じがします。
もちろん、専門的なテクニックで、複数の映像を重ねる、そして、それを「分解」していったりして、何かを作ったり、考える事はできますが、それが、映像の「根本的な構造」である訳ではない。普通だれも時間を止めて映像を鑑賞したり、ましてや、音楽や料理を、そんな風に「時間を止めて」味わったりしませんからね。あるいはそれは不可能だと…
哲学的で難解かもしれませんね…でも僕は、そういう『時間感覚』をテーマに、作品を作ったりします。
色々な情報を手に入れるように心がけていますが、アイデアを引き出すプロセス、「モノの見方」を哲学書のようなものから学ぶことが多いですね。視点の切り替えとでも言うのでしょうか。


全然関係なく思えるかもしれませんが、無理矢理「食」に絡めて言うならば、言葉で、世の中の見方感じ方が変わる例として、世界の終わりだといわんばかりに落ち込んでいる時、「ご飯が食べれて眠れるんなら、大丈夫だよ」っていう友人の一言で、少し気が楽になったり、悩みの種と少し距離を置けたりする。
自分の周りの世界が、違う様相を帯びて見えてくる、そういう感覚が、「言葉」と「眺め方」の関係、だと、思ったりします。
全然次元の違う「文章」などの「力」で、ある映像を思い浮かべたり、あるいは、映像にもなっていない「コンセプト」みたいなものを、描けたりします。

モラキュラーバーに、行く機会がありまして。料理の概念を越えた料理に出会いました。料理にも、こんな切り口があったのかと新鮮な驚きでしたね。
例えば、液体窒素を使わなくても、料理はできる。しかし、その調理法、それから得られるイマジネーションの広がり、みたいなものが、ここまで認知されたのは、先駆者の努力の賜物。
エル・ブジに代表されるこの手の手法も、モノの見方、料理の眺め方を変えたものだと思います。
料理界に新しい考えを吹きこみ、今までにないものを発表した彼の料理も、こうして定着し、次にまた新しいブームが出てくる。
そういう意味では、モノづくりはどんな業界であれ通じるものがありますね。

川村氏


Bar

撮影や打ち合わせが早く終わった時は、その流れでスタッフたちと飲みにいくことが多いです。
お酒によってガードが下がってコミュニケーションをとりやすくなるので、相手の人柄がわかったりするし、何か嗜好や共通点が見つかる事によって、次の仕事がスムーズに進むこともあります。この辺は、他の仕事と同じ感じですね。
最近、ウイスキーやブランデーに凝っています。他の人があまり飲んでいないから、敢えてっていう理由もありますが、昔父親がウイスキーを飲んでいたという情景と、今の自分を重ね合わせられる、そういうのが心地いい。
想い出の中でのリアリティがきちんとある、というのかな。一人でフラッと立ち寄り、バーテンダーと話し、落ち着いた雰囲気を味わうのが最近の楽しみです。
その楽しみが高じて、自分もバーをやってみたいなぁって最近思うんです。村上春樹の初期作品に出てくるような雰囲気の、あまり「美味しくなさそうな」(苦笑)、でもピンボールとビリヤード台はあって、酒はボトルもの…栓を抜いて、はい!って感じのものだけ。で、「本格的な酒を飲みたいんだったら、他の店に行ってくれ」って言う店。
自分の好きな物だけがある、バー。そんなプライベートな「店主の顔が見える」雰囲気が好きで、自分の通う店も、そういう雰囲気を持っている店が、ほとんどかもしれません。
そこにあるのは、やはり、簡単にいうと、「アナログ」感というのかな。
デジタル化が進み、世の中が便利になっているのは確か。その一方で「フィルムっぽく撮れる」機能が付いたデジタルムービーカメラが、人気だったり、その開発に躍起になっていたりする。
フィルムというアナログを脱却したはずなのに、それにまた近づこうとしている。不思議だけど、世の中ってほんとにいいもの、僕がウイスキーに抱くような「リアリティ」の感覚に「戻ろうとする」、そういう一面があるんだと思います。



◆川村氏おすすめのSHOP
中目黒 Bar Verano
本格スペイン料理が味わえる一軒。本場スペインバル(居酒屋)を彷彿とさせる雰囲気と、豊富なメニューが魅力。
http://www.verano-co.jp/

タッチペン ウィスキー
川村ケンスケ
音楽ビデオ、コマーシャルフィルムの演出。東京外国語大学外国語学部英米文学科(当時の呼称)卒業後、キティレコード入社。
現在はゴイス(株)がマネージメントを行う。
音楽ビデオではフィッシュマンズ、東京スカパラダイスオーケストラ、中島美嘉、安室奈美恵、ET-KING、V6等の作品を演出、コマーシャルではカネボウKATE・ALLIE, 第一興商、京王グループ、東芝、ジレット、爽健美茶、等の演出を。2002年には初の劇場用映画監督作「記憶の音楽Gb(ジービー)」が公開された。
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